『モミジノススメ』

​-Official Interview-

Ezoshika Gourmet Club 1stミニアルバム『モミジノススメ』

全部リード曲にしたいなって曲は作っています。

常に全力投球で。飛び抜けた曲を作りたいんですよ。

テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

Ezoshika Gourmet Club(エゾシカ・グルメ・クラブ)という風変わりな名前を持つバンドがロックシーンに新しい潮流を起こそうとしている。

 

2020年の音楽シーンは一気にDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んだ。コロナ禍によって、フェスやライブ、インストア施策などCD販売に制限がかかったからだ。その結果、さらなるネット発シーンの躍進が進み、ボカロ文化圏、TikTok文化圏、YouTube文化圏が折り重なって音楽シーンのあり方が変わりつつある昨今。しかし、そろそろロックが聴きたくなってきた頃ではないだろうか?

 

Ezoshika Gourmet Clubが解き放つサウンドは、UNICORN、Official髭男dism、マカロニえんぴつなどが好きなリスナーなら“ハッ”としてもらえるかもしれない。

 

思わず耳に残る歌えるキャッチーなメロディー、オルタナ感を漂わせる畳み掛けるかのようにグルーヴするバンドアンサンブル、甘酸っぱいリリックが軽妙にドライブする伸びやかなヴォーカリゼーション。どこかしら計算された緻密な楽曲構築のセンスの良さ。まず、リズムを刻みながら畳み掛けるようにビートで煽る「昨日の月にさまよえば」に心を鷲掴みにされた。イントロで鳴り響くテクノセンス、ベースやドラム、ギターによるグルーヴの躍動感。歌声とキーボードリフのキャッチーさ。なんでもメンバーはナンバーガール、ZAZEN BOYS、フジファブリックがルーツにあるという。

 

「ポップであることは譲れないなって思っています。オルタナティブロックというよりはオルタナティブポップかも。音で遊んでいるけど、聴いた印象としてはポップでありたいなと。ビッグになりたいし。」

(池澤 英 / Vo.&Gt.&Key)

 

注目されたきっかけはロックバンドの登竜門といえるオーディションだった。2019年12月MASH A&R主催『MASH HUNT LIVE Vol.1』にて "BEST ARTIST"に選出。また、立て続けにA-Sketch,avex,J-WAVE,FM802という4社共同で行われたニューカマー発掘プロジェクト『GIANT LEAP』にて 2019年度"GRAND GIANT LEAP PRIZE"を受賞。ダブルで音楽シーン最前線のプロジェクトから大きなお墨付きを獲得した。さらに、早耳リスナーからの評価も高く、カレッジチャート団体 CRJチャートで1位を獲得している。

 

「ちょうど、去年キーボードが8月に抜けて。どうしようかなって考えていて、自分でキーボードも弾くようになったら意外にも僕らのスタイルとなりました。」

(池澤 英 / Vo.&Gt.&Key)

「その後、『MASH HUNT LIVE Vol.1』のオーディションで優勝して、自信を持っていいんじゃないかなと思いました。」

(額田一佑 / Gt)

 

Ezoshika Gourmet Clubは、栃木県出身のVo.&Gt.&Keyを手掛ける池澤 英を中心に、松下和樹(Ba)、額田一佑(Gt.)によって結成された学生バンドだ。その後、音大出身のスキルフルなドラマー守屋優樹(Dr)がサポートとして参加。ちょうど1年前、各オーディションで結果を残したのちに正式メンバーとなる。なお、池澤は現在理系の大学院生であり休学中だという。

 

「大学3年から、東京の大学に編入したんです。学校の先輩に川谷絵音さんがいて。リスペクトしているんですけど、まだ接点はないです(泣)。僕は栃木でもバンドをやっていたんですけど、上京する直前にネットでメンバー募集を見ていたらまっちゃん(松下)がいて。」

(池澤 英 / Vo.&Gt.&Key)

「ちょうど自分も新しいバンドをやりたかったタイミングで、ナンバーガールが好きなど音楽性が近かったんです。」

(松下和樹 / Ba)

「池澤さんは大学の先輩で。サークルで出会いました。編入して来たので同期なんですけどね(笑)。新入生歓迎ライブでフジファブリックを一緒にカバーしました。その後、バンドに誘われて2018年1月に結成へ至るという。最初のライブは下北沢ERAでした。」

(額田一佑 / Gt)

「加入前、Twitterに演奏している動画をアップしていたんです。そうしたら、池澤さんがメッセを年末にくれて。もともとスタジオミュージシャン志望で、最初はサポートだったんですけど魅力的な3人だったので加入することにしました。」

(守屋優樹 / Dr)

 

こうして集まった運命共同体のバンドメンバー。しかしながら今年は、コロナ禍であることから彼らのライフワークであったライブ活動がままならない状況だ。そんななか定期的に楽曲を配信リリースしてきた結果、Spotifyによるニューカマーアーティストをフックアップする公式プレイリスト『Early Noise Japan』や『J-ROCK Now』、筆者が選曲を担当する『キラキラポップ:ジャパン』にリストイン。知る人ぞ知るバンドとして注目度が高まるなか、満を持して2020年10月21日、待望の1stミニアルバム『モミジノススメ』をリリースした。作品中、様々な表情をみせる各楽曲を聴いて思ったのは、詞曲を手がける池澤 英のクリエイティヴな才能だ。

 

「池澤さんの作曲センスはいいですね。毎回、デモの雰囲気とか曲によって変わるんですよ。同じテイストがないなって。でも“池澤スタイル”はあるんですよ。すごいなと思っています。演奏に関しても厳しいんで(苦笑)。僕ら、上物が多いのでサウンドが渋滞しないようにこだわっていますね。」

(額田一佑 / Gt)

「自分の感性的にはスタジオミュージシャン気質だったので、詞曲を作る池澤さんの個性あるスタイルには毎回驚かされます。普通じゃない“?”な展開のフレーズでも、バンドで合わせたら結果いい感じになるんですよ。けっこう、引き出してもらっています。信頼していますね。」

(守屋優樹 / Dr)

「好みのツボが近いですね。歌メロや各楽器の立ち位置もわかってくれているので、自由にやらせてもらっています。楽曲は日本人的な情緒というか独特の抑揚があるんですね。アンニュイというか。」

(松下和樹 / Ba)

 

本作、1stミニアルバム『モミジノススメ』は、音楽シーンで注目度の高かったEzoshika Gourmet Clubによる名刺のような作品だ。現時点での代表曲といえる上京しても退屈に抗えず日々のモヤモヤをひっくり返そうとする逃避行ソング「東京」、そして、バンドの方向性を決定づけたキラーチューン「昨日の月にさまよえば」を再レコーディングして収録している。

 

「『昨日の月にさまよえば』は、メンバーがそれぞれ集まるきっかけになった曲ですね。吸引力が強いです。これまで3回録り直していますね。『東京』は、故郷をテーマに歌っていますね。東京での日々の生活に息苦しさを感じたり。そんな時は、たまには逃げようぜっていうか、遊びに行こうぜと思って作りました。みんなが思う上京感ではないんです。地元栃木が好きだっていう(笑)。サビ前の浮遊感にこだわりましたね。」

(池澤 英 / Vo.&Gt.&Key)

「『東京』は、ちょっとノスタルジーな感じがありますね。」

(額田一佑 / Gt)

「『昨日の月にさまよえば』は、ベースの八分を最後まで弾ききるっていうグルーヴ感ですね。」

(松下和樹 / Ba)

 

10月に先行配信した、2曲目に収録された「猫と占いと家具屋」は、ユーモラスなエンタメ性が炸裂するポップソングながらも、楽器隊のプログレ的展開が気持ちよくも感情を飛ばしてくれるアッパーチューンだ。

 

さらに、バンド仲間であるドアノブロックのヴォーカリスト、セックスフラペチーノをデュエットシンガーに迎えたキャンディーポップ・チューン「弾ける炭酸」が超絶キャッチーな楽曲で驚かされた。実はこのバンド、イントロの作り方も今の時代に最適化した方法論で、ストリーミングサービスで入り込みやすいように練りに練られている。そんな計算尽くなサウンドも決して嫌味ではなく、親近感ある距離感の近さをクリエイティヴで表現し、楽しませてくれる。

 

「ドアノブロックとは、とあるオーディションで一緒になったのが最初で。仲良くなったのは、ライブの打ち上げでカラオケに行ったのがきっかけですね。」

「そこで、くるりの『琥珀色の街、上海蟹の朝』をセックスフラペチーノさんと歌ったらとてもハーモニーが合うなって。いつか一緒に曲を作りたいなと形にしました。ポップであることは恐れないですね。」(池澤 英 / Vo.&Gt.&Key)

 

Ezoshika Gourmet Clubがすごいのはバンドキーワードである“オルタナ”という軸はブレることなく、楽曲によってギアチェンジするがごとくカラーを変えられることだ。4曲目に収録した「青山通り」はバンドにとっても新境地といえる都会派ポップ感覚ある軽妙な雰囲気を持つナンバーだ。さらに同じタイプのイントロダクションからスタートする、渋谷系センスで洒落た透明感あるギターポップを楽しませてくれる「スカート」も秀逸だ。そして、9月に先行配信した「六畳間のヒーロー。」ではギター、キーボード、ベース、ドラム、そしてヴォーカルの全てのパートがスターとなる笑顔ほとばしるバンドサウンドを届けてくれた。

 

「『青山通り』での、ファンキーなちょいハネ感がいいですよね。この曲、サビが一回しかない独特な構成なんですよ。もう一度聴きたくなるような狙いもあって。」

(守屋優樹 / Dr)

「『スカート』の、イントロのギターリフは降りてきましたね。こだわったポイントです。」

(額田一佑 / Gt)

「全部リード曲にしたいなって曲は作っています。常に全力投球で。飛び抜けた曲を作りたいんですよ。あと、4分以内の曲にこだわっています。短い曲で印象に残ること。サブスク時代なのでまずは好きになってもらって、その後、繰り返しじっくり聴いてもらえたらと。」

(池澤 英 / Vo.&Gt.&Key)

 

ロックサウンドの楽しさを絶妙なる足し算で魅せるのがEzoshika Gourmet Club“らしさ”かもしれない。決め所の痛快さ、しかしサウンドはぶつかることなく、絶妙なバランスで時代の鏡となる気分をポップミュージックとして昇華してくれる。まだまだ、ライブを日常でフルには楽しみづらい環境が続くかもしれないが、チャンスがあったらEzoshika Gourmet Clubの名前を覚えておいてほしい。バンドが持つ、ヒット感ある楽曲パワーの可能性。2021年、いいメロディーを奏でるギターロックシーンが面白くなりそうな予感がするのだ。

@2018 by Ezoshika Gourmet Club

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